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コンプライアンス 服従の心理

.15 2013 映画 comment(0) trackback(0)
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 2004年、アメリカの大手ファーストフード店で実際に起こった事件を
題材にした映画「コンプライアンス 服従の心理」。
上映規模が余りにも小さく、目につく様なPR活動もされていなかったので、
その存在自体を知らなかったのですが、偶々購読している新聞の映画評論の
コーナーで知り、7月の映画ファンサービスデイを利用して観て参りました。
今日は、その感想をアップして行きます。

《あらすじ》
アメリカのとあるファーストフード店。
前日のバイトのミスにより一部の食材が使用できなくなってしまい、店は朝
から大忙し。
更に、本店の従業員が客に紛れて視察しに来ると云う噂もあって、店長の
アンはピリピリしていた。
そんな折、店に警察官を名乗る男から一本の電話が入る。
「御宅で働いている若い女性従業員に窃盗の疑いがかかっている。
捜査に協力して欲しい。」
この電話を受けたアンは、該当すると思われる従業員ベッキーをオフィスに
連れ出す。
電話の男は身体検査と称してベッキーを全裸にすることを要求。
それにアンは盲目的に従ってしまう。
そして、男からの要求は段々とエスカレートして行き…。

以下、ネタばれありの感想です。
 超々小規模な上映(何と東京では1館のみの上映!)で、物語もそこまで
広がりを見せない小粒な作品ながらも、「思考停止することの怖さ」を非常に
巧く表現出来ていた良作でした。

「そもそも何で誰も相手が警察官であるか確認しなかったのか?」
「女性をすっぽんぽんにさせる身体調査なんて、ある訳ないと思わなかった
のか?」
「従業員でもない、しかも男性に、ひん剥かれた女性と一対一で同じ場所に
留めておくことに、アンは問題が発生すると思わなかったのか(現に、劇中
ではアンが暫らく帰ってこないことを良いことに、犯人は、アンの婚約者が
ベッキーを監視している間に、婚約者にベッキーを性的暴行させた。)?」
等々、これらのごくごく当たり前のことを、作中で真面目な人間に描かれて
いたアンが全く出来ていなかったことが、犯人が実は子持ちで、銀行の防犯
機器の営業担当と言うまっとうな人間であったことよりも、ゾッとします。
本作は、ベッキーに訴えられたアンがテレビ番組の取材を受けるシーンで
幕を閉じるのですが、そこでアンに「悪いことをしたと云う意識が全く見ら
れなかった」ことに、これまた冷水を浴びせさせられるような怖さが
ありました。
本作の肝は、これらのアン(真面目な人間)の行ないにあると思われます。
いや~、ヘタなホラーより本作の方が断然怖い。
やはり恐るべきは幽霊やクリーチャーなどではなく、ヒトの心なんだな~…。

これはパンフに寄稿してた大学の教授も指摘されていたんですが、店長の様な
真面目人間が犯人に簡単に踊らされていたことに対し、上に対してそこまで
従順ではない男性のバイトが、犯人の要求に異を唱えていて、この真面目対不
真面目の対比が面白かった。
この対比により、真面目過ぎる・組織に従順過ぎる人間が罠に陥り易いことを
明示出来ていたと思います。

上で物語に広がりが見られないと述べた通り、本作は殆どがファーストフード
店のオフィスでのみで展開するのですが、それにも関わらず、だれることなく
緊迫した空気を途切れさせていなかったのは、流石の一言。
いつも通りに店が通常営業している裏では、とんでもないことが進行
していたというアンバランスな画も、怖さを際立たせてたりしていて、この
限定された舞台が色々な所に良い影響を与えていたと思います。

本作で一つ不満であったのが、妙なカメラ割り。
「それ、映す必要あるの?」と云う風景や、事件を聞きつけた本物の警官が
ファーストフード店に駆けつけるシーンで、永遠と警官の顔をどアップで映し
続けたり、本作では(個人的に)珍妙なカメラ割りが多かったです。
これらを削れば、本作はもっとテンポが良くなったと思います。

そんなこんなで、非常に限られた環境での上映となっている本作ですが、その
扱いが勿体無いと思える良作でした。
以上!

以下余談
本作の基となった実際の事件ですが、パンフによれば、犯人は証拠不十分で無罪、
店長(アンのモデル)は、企業から解雇を言い渡され、保護観察処分、店長の
婚約者は性的行為を強要した罪で5年の実刑判決、ファーストフード店は約6
億円の損害賠償金の支払い(ベッキーのモデルになった人に対して)命令が
下されたそうです。
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